海外旅行で予防接種が必要な国・ケースは?【情報収集や緊急時の連絡方法も】
今回は、海外旅行に行く際の予防接種について紹介していきます。海外では、日本ではなじみのない感染症が流行している地域もあるため、渡航先や状況に応じて、適切な感染予防対策をしておくことが大切です。
予防接種の必要性や予防できる病気、予防接種を受けられる場所や、現地で発症した場合の対処法について、徹底解説していきます。より安全に海外旅行をするためにも、ぜひこの記事を参考にしてください。
海外旅行に予防接種は必要?
海外旅行に行く際は、渡航先に合わせて予防接種を検討しましょう。海外には、日本にない感染症が多くあり、感染するリスクがあるためです。
予防接種「必須」の国や地域 | 黄熱予防接種証明書が必要な南米やアフリカの国など・特定の感染症が流行している国や地域 |
---|---|
予防接種の検討が必要な国々 | 中国・韓国・台湾・香港・マカオ・タイ・ベトナム・シンガポール・フィリピン・インドネシアなど |
「渡航目的によっては」予防接種を受けた方が良い国々 | アメリカ・カナダ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・オーストリア・スペインなど |
予防接種が必要かどうかは、感染症の流行状況や時期によっても変わるので、「厚生労働省検疫所FORTH」(以下FORTH)のHPから最新情報を確認するようにしてください。
予防接種の必要性について、解説していきます。
自身の感染と周囲への二次感染の防止になる
予防接種が必要な理由は、自身の感染防止に加え、周囲への二次感染を防止するためです。予防接種をすると、病気に対する免疫ができ、感染症の発症や重症化のリスクが下がります。
また、感染症の中には人から人に感染する病気も多いです。自らが感染源とならないためにも感染予防に努めましょう。
感染を防ぐためには、旅行先の感染症情報をしっかり収集しておくことが大切です。感染症について理解した上で、医師と相談してワクチン接種を検討してください。
予防接種証明書を要求されるケースがある
旅行先の国によっては、予防接種証明書を要求されるケースがあります。例としては、入国時に黄熱の予防接種証明書の提出を義務付けている、アフリカや南米の国などです。
提出しないと入国や入境を拒否されてしまうため、事前に予防接種を受け、接種機関から黄熱予防接種国際証明書を交付してもらう必要があります。
旅行の際は、渡航先が予防接種証明書を必要とするかどうか、確認しておきましょう。
海外旅行前の予防接種が推奨されている病気
FORTHにより、海外旅行前の予防接種が推奨されている病気について紹介します。下記に紹介する感染症は、ワクチン接種により予防が可能です。
注意が必要な渡航先 | 注意すべき感染症等 | 感染リスクのある地域 |
上下水道の整備が悪い発展途上国 | 破傷風 | 世界各国 |
---|---|---|
A型肝炎 | アジア・アフリカ・中南米など | |
感染症を媒介する虫や動物がいる地域 | 日本脳炎 | アジア・オセアニア |
黄熱 | アフリカ・中南米 | |
狂犬病 | ほぼ世界各国 | |
日本で排除状態にある
感染症が発生している地域 |
麻しん・風しん | 世界各国 |
特定の感染症にかかりやすい地域 | ポリオ | アフリカ・アジアなど |
黄熱 | アフリカ・中南米 | |
髄膜炎菌感染症 | アフリカ |
ワクチン接種により予防できる病気について、わかりやすく解説していきます。料金の目安として、「国立国際医療研究センター病院トラベルクリニック」(以下「医療研究センター」)のワクチン価格も紹介するので、参考にしてください。
破傷風・ジフテリア
破傷風とジフテリアは、破傷風菌やジフテリア菌に感染すると発症する病気です。それぞれ菌が毒素を産生し、神経や筋肉に作用して死にいたるケースもあります。
感染経路は以下の通りです。
- 破傷風菌…傷口からの感染
- ジフテリア菌…人から人に感染(患者の咳など)
医療研究センターでは、破傷風とジフテリアの混合ワクチンが4,500円で接種できます。
A型肝炎・B型肝炎
A型肝炎とB型肝炎は、ともにウイルスによって引き起こされる肝臓の炎症です。主に以下のものが感染源とされています。
- A型肝炎…加熱処理されていない食べ物や飲み物
- B型肝炎…唾液や体液の濃厚接触(性行為)・母子感染
A型肝炎は自然治癒するケースが多いですが、B型肝炎は一過性感染例で劇症化して死亡したケース(2%)もあるため、注意が必要です。
医療研究センターでは、1本あたりでA型肝炎が7,000円、B型肝炎なら5,500円で予防接種を受けられます。
狂犬病
狂犬病は、犬やキツネ、アライグマやコウモリなどの野生動物に引っかかれたり、咬まれたりすると感染するおそれのある病気です。発病すればほぼ100%死にいたるため、野生動物との接触が予想される場合は、予防接種が推奨されます。
事前にワクチン接種をしていても、狂犬病発生地域で動物に引っかかれたり咬まれたりしたら、速やかなワクチン接種が必要です。医療研究センターでは、14,000円でワクチン接種を受けられます。
日本脳炎
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスを保有する蚊に刺されると発症する病気です。死亡率の高い急性脳炎で、後遺症が残るケースも多くあります。
ワクチン接種の検討が必要なのは、主に流行している東南アジアなど。近年、媒介蚊の生息域が拡大したため、オーストラリア地域でも予防接種の検討が必要になりました。
医療研究センターでは、6,000円で予防接種を受けられます。
ポリオ
ポリオは、主にウイルスが口の中に入って、腸で増加して感染しますが、患者の咳やくしゃみによっても感染する病気です。ポリオウイルスによって急性の麻痺が生じます。
ポリオ発生国に旅行する際は、現地での行動様式や感染状況に応じて、渡航前の追加予防接種の検討が必要です。ポリオの予防接種は、医療研究センターで8,500円で受けられます。
黄熱
黄熱は、蚊によって媒介されるウイルス性の感染症です。致死率は5〜10%とされていますが、免疫を持たない人は60%以上に達するケースもあります。
アフリカや南米の熱帯地域への旅行の際に、ワクチン接種が必要になり、国によっては、入国時や乗り継ぎ時に黄熱予防接種証明が必要です。医療研究センターでは17,930円で予防接種を受けられ、国際証明書も交付してもらえます。
麻しん・風しん
麻しんと風しんは、急性のウイルス性発しん性感染症です。いずれも、高い感染力で人から人に感染します。
主な症状は下記の通りですが、まれに肺炎(麻しんのみ)や脳炎を引き起こすため、注意が必要です。
麻しん | 発熱・せき・鼻汁・結膜充血・発しん |
---|---|
風しん | 発熱・発しん・リンパ節腫脹 |
医療研究センターでは、それぞれ5,500円で予防接種を受けられます。
髄膜炎菌感染症
髄膜炎菌感染症は、アフリカの中央部で感染事例が多い、致死率の高い病気です。感染者との狭い空間での共同生活や、日常的な接触(キスやコップの共用)により感染します。
髄膜炎菌感染症は、A群・B群・C群・Y群・W-135群の5つのタイプに分類されており、4価結合型ワクチンで、B群以外の予防が可能です。医療研究センターでは21,500円で4価結合型ワクチン、 24,800円でB型ワクチンの接種が受けられます。
新型コロナウィルス
新型コロナウイルスは、飛沫やエアロゾルを介して人から人に感染する新しい感染症です。
咳や発熱をはじめ、多くの症状を引き起こし、軽症の事例が多いものの、持病などにより重症化するケースがあります。
外務省の情報によると、2024年3月時点で入国制限措置や行動制限措置を課している国は、キリバスとジブチ、トルクメニスタンの3国のみです。2023年度で全額公費でのワクチン接種が終了し、2024年度以降は、7,000円を標準として自己負担費用が発生します。
海外旅行前の予防接種はどこで受けられる?
海外旅行前に予防接種を受ける方法は、主に以下の3つです。
- 検疫所で接種してもらう
- 検疫所窓口に相談する
- 予防接種データベースから探す
予防接種は、事前予約が必要だったり、種類によっては間隔をあけて複数回の接種が必要だったりするため、時間を要します。予防接種の受け方や接種機関の探し方を把握して、早めに受けられるようにしておきましょう。(できるだけ出発の3ヶ月以上前から)
順番に解説していくので、参考にしてください。
検疫所で接種してもらう
海外旅行前の予防接種は、検疫所(予約制)で受けられます。ただし、検疫所で扱っているのは、主に黄熱ワクチンで、それ以外のワクチン接種がない場合が多いです。
予防接種が受けられる検疫所は、FORTHのHPから確認できます。検疫所が近隣にない人や、黄熱以外の予防接種を受ける場合は、トラベルクリニックや、渡航外来対応の医療機関を利用しましょう。
検疫所窓口に相談する
検疫所以外で予防接種を受けたい人は、検疫所の電話相談機関に問い合わせてください。渡航先に必要な予防接種に対応しているトラベルクリニックや、渡航外来対応の医療機関の案内などをしてくれます。
検疫所電話相談機関は、FORTHものHPから一覧の確認が可能です。電話相談の受付時間は主に8:30〜17:15の間ですが、検疫所ごとに異なるので注意しましょう。
予防接種データベースから探す
自分で探す場合は、FORTHの予防接種データベースから、接種機関を検索可能です。データベースには、渡航者向け予防接種機関の情報が集積されています。
使い方は、施設名や住所を入力し、接種したいワクチンや診療体制を選択して検索するだけです。近隣に検疫所がない人や、渡航外来対応の医療施設がわからない場合は活用してください。
海外旅行前に予防接種を受ければもう安心?【現地での注意点や緊急時の対応】
海外旅行は、事前に予防接種をしておけば100%安全というわけではありません。予防接種で予防できる病気もあれば、何割かの確率で発症する病気もあります。
重要なのは、旅行先で発症する可能性のある感染症について、正しい知識や予防方法を知っておくことです。感染症のリスクを減らすための現地での注意点や、感染症にかかってしまった緊急時の対応についても解説していきます。
現地での注意点
海外旅行では、予防接種以外にも水や食べ物、蚊や動物に注意しましょう。それぞれ以下の感染症にかかるおそれがあります。
主な感染症等 | 予防・対策 | |
水・食べ物 | A型肝炎・コレラなど | 生水(氷)や生物の飲食を避ける |
蚊・ダニ | マラリア・デング熱など | 虫除けスプレーの使用・長袖の着用 |
動物 | 狂犬病・鳥インフルエンザなど | 野生動物との接触を避ける |
衛生環境の良くない環境下では、生の魚介類やカットフルーツも極力避け、充分に火の通った食事をとるようにしましょう。
海外では、飲食で腹痛や下痢を起こすケースも珍しくありません。手洗いもこまめに行ってください。
緊急時の対応
現地で急を要する症状が見られた場合は、速やかに医師にかかりましょう。以下の症状が見られたら要注意です。
- 激しい下痢
- 頻回の下痢
- 血液が混じっている下痢
- 高い熱が見られる
- 発熱を伴う発疹などの皮膚の異常
感染症にかかっている可能性が高いため、速やかに現地の病院へ行き、診断および処置をしてもらってください。現地の医療機関情報は、大使館や領事館に問い合わせるか、外務省のHP内の「世界の医療事情」から調べられます。
緊急時にすぐ対応できるよう、インターネット環境を準備しておくべきでしょう。
【海外旅行をする際は】予防接種とインターネット環境の準備を忘れずに!
海外旅行をする際は、渡航先の感染症情報をチェックして、必要に応じて予防接種を受けるようにしましょう。
海外旅行をより安全かつ快適にするためには、感染の恐れがある病気に対して万全の対策をしておくことが大切です。
ポケットWi-Fiなどのインターネット環境の準備は忘れないようにしてください。インターネットが使えれば、いざという時も現地の医療機関情報をスムーズに調べられます。
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世界135の国と地域に対応しているので、海外旅行を安全で快適に楽しむためにも、ぜひご利用ください。
海外旅行の予防接種に関するよくある質問
-
Q海外旅行の予防接種が間に合わない場合はどうすればいいですか?
A医師が必要と認めれば同時に複数のワクチン接種を受けることもできるので、まずは一度クリニックに行ってみましょう。
-
Q予防接種はどこで受けられますか?
AFORTHの「予防接種機関検索」で調べることができます。
-
Q海外旅行前に何回予防接種を受けたら良いですか?
A予防接種の回数は、予防接種の種類、これまでに接種した予防接種の履歴や年齢などによって異なります。
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